特別養子縁組を考えている人たちの多くは、低年齢の子供を望んでいるように思います。
養親と子供の間の愛着形成を考えた時に、乳幼児の方が問題が少なそうと考えるのは自然なことだと思います。
もし、実親さんから虐待を受けた経験があれば、それが子供を迎えた後に大きな影響を与えるかもしれません。
私たちの場合は、息子が8歳の時にうちに迎えました。8歳ともなるとかなり人格が出来上がっている年齢なので、”ひねくれていたらどうしよう”とか”お父さんお母さんって呼んでくれるだろうか?”などなど、色んな不安がありました。
そこで、特別養子縁組で高年齢児を迎える場合の良いこと悪いことを、私の体験からお伝えしようと思います。
良かったこと
うちの息子は8歳の時に迎えました。
ちゃんと物事が分かる年齢ですし、特別養子縁組がどういうものなのかも理解してうちに来ました。
物事の分別があり、色んなことが理解できる子だったので、こんなことがとても助かりました。
迎える前から養親であることを理解している
特別養子縁組の年齢が15歳までに引き上がったのは2020年なので、それまでは乳児期に迎えるケースが多かったようです。
そうなると必ず必要になるのが、自分たちが実親ではなく養親であることを伝える「真実告知」です。
特別養子縁組を経験した友人たちの話を聞くと、真実告知をされた後の子は落ち込んでしまったり、実親に対する怒りが爆発したりして、やはり難しい状態になってしまうそうです。
それに対して私たちの息子の場合は、最初から私たちのことを養親だと分かってうちに来たので、真実告知はやっていません。そのため、それに伴う難しい感情の戦いもありませんでした。
ただ、実親ではないと分かっているということは、自分の親として受け入れるまで時間がかかるということでもあります。ある程度人格が出来上がっている子供の場合は、自分の親として受け入れるまでの難しい葛藤があるので、真実告知が不要でも別の難しさがあると思います。
ちなみにうちの場合は迎えてから1ヵ月も経たないうちに”お父さん””お母さん”と呼んでくれるようになり、かなりスムーズに家族関係が作れました。気心が知れると一気に仲良くなれる性格の子だったので、私たちとの生活に慣れるのも早かったのだと思います。
手がかからない
歯磨き、着替え、体の洗い方など、自分の身の回りのことは全部できてしまうので、そういったことを教えなくていいのは、意外に楽でした。
とは言え普通の男の子なので、整理整頓とか後片付けなどはやってくれません。そういうわけで、”靴下を脱ぎっぱなしにするんじゃありません!”というお小言を日常的に繰り返しています。
そこはどこの家庭とも同じだと思います。
体力的に楽
一般的に子育てで体力を使うのは、子供が乳幼児期の頃ではないかと思います。
乳児であれば夜中でもケアが必要ですし、いつも一緒にいて目を離すことができません。
幼児期になってもほったらかしにできないので、一緒に遊んであげる必要だってあります。保育施設に預けることができなければ、さらに負担は増えます。
でも、高齢の子供であれば、自分のことは自分でできます。自分で好きなことをして過ごすこともできます。
うちの場合も最初は一緒に遊んで親子の情緒的なつながりを作る必要がありましたが、それを過ぎるとTVを見たり、Switch2をやったりと勝手に遊んでいるので楽ではあります。(ただし、当然ですが楽して、そればっかりやらせているとと、脳と精神に大きな悪影響があるので、上手に制限することが目下の悩みですw)
難しかったこと
難しいことも当然あります。
しかし、どれも想像の範囲内だったので、驚くようなことではありませんでした。と言っても楽なわけじゃないんですが…。
しつけが難しい
ある程度人格が固まってしまっているので、日常生活でできていないことをできるようにしつけるのは、もの凄く大変です。
トイレでおしっこを座ってするくらいならすぐできるようになりましたが、スイッチを忘れずに切ることや脱いだものを選択かごに入れるみたいなそれまでに身についてしまった悪い習慣をしつけるのは、かなりの今期と工夫が必要になります。
“後始末をせずに次のことをやる”という行動パターンが完全に固着しちゃっているので、これだけは本当にいつも悩まされていますw
実親さんの悪影響がある
息子はうちに来るまで里子として委託された経験はなく、ずっと児童養護施設で育ってきました。
実親さんの養育のもとで生活できるように、交流を続けた期間もありましたが、最後は実親さんから”もう育てることはできない”と直接伝えられて、特別養子縁組をすることになりました。
実親さんからもう育てることができないと直接伝えられたことは、息子にとってはとてもショックな出来事だったそうです。しかし、それ以外は虐待を受けた経験は無く、私たちは変なトラウマを植え付けられてないので、比較的育てやすいのではないかと思っていました。
ところがやはり実親さんから一緒に暮らすことができないと伝えられた経験は、とても大きな悪影響がありました。
息子は自分が捨てられたのは勉強ができないからだと思っていました。実際に算数が苦手で宿題を自力でやるのは難しいのですが、”宿題をやらないと見捨てられる、でもやりたくてもできない”という間違った心の声に支配され、宿題を前にするといつも癇癪を起こしていました。
実親さんたちは、決して故意に傷つけるようなことはしていないのですが、親子関係の断絶という経験はやはり少なからず悪影響を与えるものです。
実際に工夫していること・苦労していること
私たちは、高年齢児を迎えることになりました。特別養子縁組を経験している友人たちは多かったのですが、高年齢児を迎えたカップルはいなかったため、具体的なアドバイスを貰える人はいない環境でした。
そのため、夫婦で相談して試行錯誤しながら、新しい生活を始めました。
今も失敗を繰り返しながら色々やっているのですが、ここではその一部を紹介しますね。
条件付きにならないように注意
普通の子供であれば、親との関係が無くなるなんて考えることがありません。そういう意味では完全に安全な関係の中で生活しているわけです。
でも、息子は私たちが実親でないことを知っている状態でうちに来ました。一度、親子関係の断絶を経験しているので、私たちに対しても不安や警戒心があるのは自然なことだと考えました。
実際に息子は最近になって、最初は「この2人も勉強しないと自分のことを捨てるんじゃないか?」と疑っていたと話してくれました。
そのため、「宿題をやらなくても、忘れ物をしても、だらしない生活をしても…。何をしてもこの家でずっと一緒に暮らしていくんだよ」ということを言葉にして何度も伝えました。
実際に日々の生活の中でも最初は失敗に対してペナルティを与えないようにしました。慣れてきた後も、ペナルティを与える時には、”自分の部屋で謹慎”のような関係の断絶を感じさせるようなものはやらないように注意しました。
しかし、叱ることやペナルティを与えることは、どうしても関係の断絶は感じさせてしまうので、それが終わった後は、笑顔で受け入れて”最後は必ず受け入れてもらえる”ことを感じさせて終わるようにしました。
これは今でも最も注意していることです。
うまくいかなかったこと、変えたこと
息子の場合、実親さんから捨てられたのは勉強ができなかったことだと考えています。これが心の深くで悪いメッセージとして、いつも響いていいて、ことあるごとに問題行動として出てしまいます。
最も出るのが、宿題をやる時でした。私たちは宿題なんてやらなくても全然かまわないと何度伝えても、無理に宿題をやろうとするのです。そして、分からなくてできないと癇癪を起こして物に当たってしまいました。
当初は私たちがいくら「宿題はやらなくていいよ」と言っても納得しなかったので、じゃあ望み通り宿題ができるように手伝ってあげてました。
でも、やり方を教えているだけでも怒りを爆発させるので、最後は答えを教えてそれを書き写すようにさせてもダメでした。
そこで、私たちは決心して、担任の先生にお願いして息子だけ宿題を免除してもらえるようにお願いしました。先生まで「宿題はやらなくていいよ」と言ってくれるようになったわけですが、なんとそれでも無理して宿題をやろうとし続けたのです。
それほどまでに実親さんからの”勉強しない子供は子供として受け入れられない”というメッセージに、息子は支配されていました。
でも、私たちは学年が変わって新しい担任の先生になるたびに、宿題免除をお願いし続けた結果、徐々に宿題をやらない生活に慣れていきました。宿題をやらない日々が”勉強を頑張らなくても受け入れてもらえる”というメッセージに変わり、徐々にその心の声の方が大きくなってきたのだと思います。
児童相談所や発達支援相談センターにアドバイスされたこと
ある程度の高年齢児になると、本来受けるべき適切な養育が不足した結果、少なからず愛着障害(※)が形成されてしまいます。
愛着障害は多かれ少なかれ、大人になってからも影響するので、正式に特別養子縁組が成立した後も、私たちは児童相談所の方によく相談しました。さらに発達障害が疑われるような行動もあったため、発達支援相談センターにも相談しました。
愛着障害には、”これをやっておけば大丈夫”みたいなものはありません。
児童相談所の方からは、夫婦関係を良くして時間をかけて忍耐強く愛することが一番効果的だとアドバイスされました。
また、発達支援相談センターからも、ADHDのような発達障害と愛着障害は区別しにくい時があるので、問題行動があっても、すぐに叱らずに広い心で受け入れることを重視した方がいいとアドバイスされました。
このことから、私たちは高年齢児の養育には何か攻略法があるわけではなく、忍耐強い愛が大事なんだと理解しています。
※愛着障害
幼少期に養育者からの適切な養育により十分な信頼関係(愛着)が築けなかったことで、情緒の安定や人間関係の構築に難しさを感じる状態です。他人を過剰に警戒し、助けを求めずに孤立し、健全な信頼関係を築けなくなります。あるいは初対面の人にも過剰になれなれしく接してしまう場合もあります。
今でも難しいこと
勉強や宿題への向き合い方はだいぶ落ち着いたと思いますが、それでも感情の起伏は相変わらず激しいです。
自分の欲しいものが得られない時ややりたいことができない時などは、自分でもどうしようもないくらいに感情的になってしまいます。
短気でいつも不安な大人になって欲しくないので、怒ってしまった理由や不安になってしまう原因などを言語化できるよう助けています。
でも、気持ちが落ち着くまでは相変わらず物に当たったり叫んだりします。こればかりは気持ちが落ち着くまで、放っておくことしかできません。
ネガティブな感情のコントロールは、安全で安心できる家族関係によって少しずつ改善していくものだと思います。
こればかりはまだまだ時間がかかるのかなと思っています。
迎える前にやっておけばよかったこと
私自身、高年齢児を迎えるにあたり、愛着障害のことを知らなければと考え、自分なりに勉強したつもりでした。
でも、実際に息子を迎えてからは、学んだことのほとんどは役に立ちませんでしたw
発達障害や愛着障害などのことは、それがどういったものなのか程度の一般的な知識があれば十分です。
私の場合は新しい生活が始まることの不安が大きく、知識習得にばかり時間を使ってしまいましたが、そんなことよりも、一緒に楽しむためのおもちゃやゲームを準備したり、一緒に遊びに行く計画を立てるような楽しいことの準備に時間を費やすべきでした。
不安を消すことよりも、喜びや楽しさを増やすためのことを準備するべきだったなと思っています。
最後に
これから特別養子縁組を考えている場合、低年齢の子供の方が育てやすいのではないかと考える人は多いかもしれません。実は私もそうでした。
児童相談所から8歳の男の子を紹介された時は正直、不安も感じました。
でも、実際に一緒に暮らし始めてみると、高年齢児だからこそのいいことや楽なこともたくさんありました。
結局、子供の年齢が若くても高齢でも、一長一短なのではないかと思います。
むしろ、高年齢児の方がある程度人格ができていて、親子になった後の生活や将来の関係をイメージしやすいのではないかと思うので、不安になり過ぎないでくださいね。



